前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
「俺なら、あなたのやりたいことを理解し、全面的に協力する。あなたのご家族の安心も、きっと得られるはずだ。もちろん、あなたが幸せになることを最優先に、一生を賭ける覚悟だ。だから、どうだ?」

 ぐいぐいと自分を売り込んでくるテオバルトに、ルティアは落ち着いてくださいと宥めた。テオバルトも勢いが強すぎたかと、前のめりになりかけた身体をグッと引き戻した。

「すまない。つい興奮してしまって……」
「いえ……。殿下が素敵な殿方であることは、わたしもよく理解しています」

 きっと彼とならば、幸せになれるだろう。

 だけどまだ……という迷いがルティアの心の中にはある。テオバルトはそんなルティアの心中を見透かしたように言う。

「迷った時は、とりあえず可能性が多い方を選んでおいた方がいいと思うぞ?」
「……今日の会話だけで、これまでの覚悟がすべて崩れていく気分です」
「俺は他の考え方を提案しただけだが?」

 それでもルティアは今の今まで思いつかなかった。それだけ一つの道に囚われていて、視野が狭くなっていたとも言える。

「それで。どうしたい?」
「そう、ですね……」

 迷いが生まれたルティアを冷静に見抜いたテオバルトの表情が、輝きを増した。

「よし! では修道院から結婚志望へ変更だな!」
「まだ決められません!」

 決定されそうになり、慌てて待ったをかける。

「わかった。ではひとまず選択肢が増えたということだな。ああ、いいとも。十分に悩むがいい」
「……策士であらせられる」
「不利な交渉において時間を稼ぐというのは大切なことだ。その間に何か上手い打開策が見つかる可能性もあるしな」

 無言で抗議の眼差しを送れば、「そう睨むな。可愛いだけだぞ」と意味の分からないことを言ってくる。ちょうどメイドがワゴンにお茶と茶菓子を載せて入ってきて、これで機嫌をとれとばかりに勧められた。

「俺もあなたと一緒に十分悩ませてもらう」

 むしろ大いに悩みたいと告げるテオバルトの表情にルティアは何も言えなくなってしまうのだった。

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