前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
「どうしてここに……」

 自ずと一歩後ろへ下がっていた。リーヴェスが微笑んだまま、何も言わないから。その姿が妙に迫力があり、嫌な予感がしたから。

「あの男を待っていたようですが、ここへは来ません」
「どういう、こと?」

 一歩、彼が部屋の中へ足を踏み入れる。

「ここへあなたを呼んだのは、私ですから」
「何を……っ」

 突然後ろから拘束され、ルティアはハンカチで口と鼻を塞がれた。必死に暴れて振り返れば、今まで談笑していた青年であった。

(どうしてっ)

 相手の手を掴んで引き剥がそうとするも、向こうも必死で、何より恐怖のせいか、身体がいつもより上手く動かなかった。

「そろそろ、先ほど飲ませた薬が効いてくるはずです」

 リーヴェスの告白に、数十分前に令嬢が注いでくれたお茶の光景が思い浮かぶ。

「ごめんなさい、こうするしか他になかったんです……」

 自分の仕出かしたことに怯え、恐怖で震える声が後ろから聞こえてきた。確かめる前に身体の力がガクンと抜け、誰かの腕に抱きとめられる。

「あぁ、アリーセ……」

 ひどく気持ち悪いのに、強烈な眠気が襲ってくる。ハンカチにも何か染み込ませていたのか。このまま自分をどうするつもりなのか。騙されたテオバルトは今無事なのか。

 いくつもの疑問が浮かんだが、ルティアがそれ以上考えることは、もうできなかった。

「これでようやく、あなたは私のものだ」

(殿下……)

 ルティアはテオバルトの姿を最後に思い浮かべ、気を失った。

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