前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
ルティアは何も言えず、ただ男の顔を凝視した。
「リーヴェス……自分がなにを言っているのか、理解しているのですか」
「もちろんです。今まで私が考えなしに事を進めることがありましたか」
その言葉にルティアはまた激しい憎悪に心を支配されそうになる。だが自分のことを今も必死で探しているテオバルトの姿が思い浮かび、どうにか怒りを抑え込み、冷静さを取り戻す。
「わたしはあなたと結婚はいたしません。以前そう断ったはずです」
「ええ。ですがあなたはあの男とは結婚しようとなさっている」
王子を「あの男」と呼ぶリーヴェスにルティアは眉根を寄せた。
「閣下。わたしは殿下とも、誰とも結婚いたしません」
「ではなぜ毎日、毎日、あの男のもとへ足繁く通っていたのですか。あの男ではなく、あなたから、会いに行った。それはなぜですか」
「それは殿下が……」
そこまで言いかけ、ため息をついた。
「あなたには関係ないことでしょう」
沈黙が落ちる。言い過ぎたかと俯いて思っていれば、月明かりに照らされた自分の影が踏まれる。顔を見れば、すぐ近くにリーヴェスがおり、その表情を見て後ろへ下がろうとしたが、窓にぶつかるだけだった。
「私への当てつけですか」
「何を言って……」
『陛下には関係ないことです』
(ああ……。そういえばあの時も、この男にそう言われたのだった)
暗い気持ちが押し寄せる。だが当てつけと言われて、否定する気持ちが湧いた。
「あの時のあなたと、今のわたしの立場は全く違います。同じにしないでください」
「っ……陛下。私は前世の行いを悔いています。だから――」
「だからやり直したいとでもおっしゃるのですか」
そうだと訴えるリーヴェスに、ルティアはそっけなく答えた。
「行いを悔いるなど、もう決して口にしないで。それはあなたの大事な子どもの存在もまた、否定することになるのですから」
リーヴェスは打ちのめされたように言葉を失った。
ルティアはそんな彼をちらりと見て、そばを通り過ぎようとした。だがすぐに手首を捕まえられる。
「離してください」
「あなたにどう非難されようが、あなたは私の妻です」
決して逃がさないと手首に力を込められた。
「リーヴェス! いい加減にしてください!」
突き飛ばそうとしても、彼はびくともしなかった。無表情に自分を見下ろす姿に、ルティアは全身に震えが走った。くすりと笑われ、身体を軽々と抱き上げられる。暴れても、無駄だった。あっという間に寝台の上へと下され、覆い被さられる。
「いやっ、やめて……!」
手首を掴まれ、シーツの上へ縫い付けられる。
「かつては子どもまで作った仲ではありませんか」
「リーヴェス……自分がなにを言っているのか、理解しているのですか」
「もちろんです。今まで私が考えなしに事を進めることがありましたか」
その言葉にルティアはまた激しい憎悪に心を支配されそうになる。だが自分のことを今も必死で探しているテオバルトの姿が思い浮かび、どうにか怒りを抑え込み、冷静さを取り戻す。
「わたしはあなたと結婚はいたしません。以前そう断ったはずです」
「ええ。ですがあなたはあの男とは結婚しようとなさっている」
王子を「あの男」と呼ぶリーヴェスにルティアは眉根を寄せた。
「閣下。わたしは殿下とも、誰とも結婚いたしません」
「ではなぜ毎日、毎日、あの男のもとへ足繁く通っていたのですか。あの男ではなく、あなたから、会いに行った。それはなぜですか」
「それは殿下が……」
そこまで言いかけ、ため息をついた。
「あなたには関係ないことでしょう」
沈黙が落ちる。言い過ぎたかと俯いて思っていれば、月明かりに照らされた自分の影が踏まれる。顔を見れば、すぐ近くにリーヴェスがおり、その表情を見て後ろへ下がろうとしたが、窓にぶつかるだけだった。
「私への当てつけですか」
「何を言って……」
『陛下には関係ないことです』
(ああ……。そういえばあの時も、この男にそう言われたのだった)
暗い気持ちが押し寄せる。だが当てつけと言われて、否定する気持ちが湧いた。
「あの時のあなたと、今のわたしの立場は全く違います。同じにしないでください」
「っ……陛下。私は前世の行いを悔いています。だから――」
「だからやり直したいとでもおっしゃるのですか」
そうだと訴えるリーヴェスに、ルティアはそっけなく答えた。
「行いを悔いるなど、もう決して口にしないで。それはあなたの大事な子どもの存在もまた、否定することになるのですから」
リーヴェスは打ちのめされたように言葉を失った。
ルティアはそんな彼をちらりと見て、そばを通り過ぎようとした。だがすぐに手首を捕まえられる。
「離してください」
「あなたにどう非難されようが、あなたは私の妻です」
決して逃がさないと手首に力を込められた。
「リーヴェス! いい加減にしてください!」
突き飛ばそうとしても、彼はびくともしなかった。無表情に自分を見下ろす姿に、ルティアは全身に震えが走った。くすりと笑われ、身体を軽々と抱き上げられる。暴れても、無駄だった。あっという間に寝台の上へと下され、覆い被さられる。
「いやっ、やめて……!」
手首を掴まれ、シーツの上へ縫い付けられる。
「かつては子どもまで作った仲ではありませんか」