前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
(安らかな顔?)

 殺されたというのに、自分はそんな顔をしていたのか。

「あなたも……その場に、いたの……?」

 リーヴェスは真顔でルティアを見つめ、やがてふっと笑った。

「ええ。いましたよ……おかしくなったあなたを離宮に閉じ込めて……死んだと思ったあの男が現れて、それで……炎の中必死であなたのもとへ向かったというのに、あなたは剣で胸を突き刺されたというのに……奴隷の顔を見つめながら、微笑んでいた……」

 その時の状況を語るリーヴェスの顔は歪み、どこか泣きそうに見えた。

「あなたは私を残して、あの男と共に死んだ。残された私は、あなたの最期を何度も思い浮かべた。夢にも現れて、手を伸ばして、掴もうとして掴めなくて……今までの自分の行いに胸が痛んだ。吐き気がした。どうして、もっと向き合ってこなかったのだろう。どうして、あんな真似をしたのだろうと」

 リーヴェスの涙がルティアの頬へ落ちてくる。

「やり直したい。もし今度あなたに会えたら、その時はきっと間違えない。今度こそあなたを――」

(あぁ、この人は……)

 首にかけられた手を必死に掴んでいたが、やめた。死を受け入れたような態度にリーヴェスの動きが一瞬止まる。そんな彼にルティアは告げた。

「――リーヴェス。あなたは前世の記憶に苦しめられているのね」

 紫色の瞳が大きく見開かれる。緩んだ指先に、息を吸って、今までずっと逃げていた視線を真っ直ぐと見つめ返す。

「あなたは自分のしたことが許せない。後悔している。だからわたしと同じように記憶を持って、生まれ変わった。そしてわたしと出会い、前世の罪を贖わなくてはならないと強迫観念に囚われた」
「違う。私はあなたのことを――」

 ルティアは彼の頬へ手を伸ばす。そして前世ですら向けることのできなかった微笑を捧げた。

「あなたを許します」

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