前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
34、生まれ変わっても
数日後。退院したルティアはリーヴェスが療養している施設へ連れて行かれた。テオバルトは何かあったらすぐに呼ぶようにと、病室の外で待ってくれた。
「うっ……くっ……」
外傷の方は特に目立った問題はないそうだが、意識がまだはっきりとせず、悪夢を彷徨い続けるかのように呻き声を上げるという。
「へいか……私は……」
(リーヴェス……)
すべての記憶を取り戻した今、ルティアはリーヴェスに対して様々な感情が渦巻いていた。自分を裏切り、他の女性と子をもうけたこと。しかもアリーセの子を失ったタイミングで……。絶対に許せない、許したくない、と生まれ変わった今でも思う。でもその復讐は、すべて前世のアリーセが行った。
自分の死後リーヴェスがどうなったかはわからない。きっと彼のことだから王配として国を支え続けたはずだ。苦労もあったに違いない。
生まれ変わった今でも苦しんでいるということは、前世もきっと――
「リーヴェス」
ルティアは投げ出されたリーヴェスの手を取る。
「へい、か……」
不思議なことにルティアの呼びかけに、リーヴェスは薄っすらと目を開けた。きっと前世の記憶が入り交じって、朦朧とした意識なのだろう。
「へいか、申し訳、ありません……私は、あなたのことを、ずっと裏切って……」
「……リーヴェス。あなたをもう許します。だからもう、すべての記憶を忘れなさい」
リーヴェスとクローゼ公爵が違う人間だと告げた時と同じように、彼は信じられない顔をした。
「そんな……いやです……」
「もう、忘れていいんですよ」
優しい声で、彼の目を覆う。
彼は呻きながら、いやだ、と繰り返す。
「この記憶だけが、私と陛下を繋ぐ、唯一のものなんです……だからどうか、奪わないでください……どうか……うっ、やめろ……いやだっ、アリーセ、アリーセっ……!」
まるで藁にも縋る勢いで繋いでいた手に力を込められる。けれどやがて、その力はゆっくりと弱まっていき、リーヴェスは――クローゼ公爵は安らかな寝顔で呼吸を繰り返した。
次に目覚めた時、きっと彼は前世の記憶を失っているだろう。
確証もないのにルティアにはなぜかそう思えた。
「さようなら、リーヴェス……」
ルティアは前世の夫に別れを告げ、部屋を出た。
「うっ……くっ……」
外傷の方は特に目立った問題はないそうだが、意識がまだはっきりとせず、悪夢を彷徨い続けるかのように呻き声を上げるという。
「へいか……私は……」
(リーヴェス……)
すべての記憶を取り戻した今、ルティアはリーヴェスに対して様々な感情が渦巻いていた。自分を裏切り、他の女性と子をもうけたこと。しかもアリーセの子を失ったタイミングで……。絶対に許せない、許したくない、と生まれ変わった今でも思う。でもその復讐は、すべて前世のアリーセが行った。
自分の死後リーヴェスがどうなったかはわからない。きっと彼のことだから王配として国を支え続けたはずだ。苦労もあったに違いない。
生まれ変わった今でも苦しんでいるということは、前世もきっと――
「リーヴェス」
ルティアは投げ出されたリーヴェスの手を取る。
「へい、か……」
不思議なことにルティアの呼びかけに、リーヴェスは薄っすらと目を開けた。きっと前世の記憶が入り交じって、朦朧とした意識なのだろう。
「へいか、申し訳、ありません……私は、あなたのことを、ずっと裏切って……」
「……リーヴェス。あなたをもう許します。だからもう、すべての記憶を忘れなさい」
リーヴェスとクローゼ公爵が違う人間だと告げた時と同じように、彼は信じられない顔をした。
「そんな……いやです……」
「もう、忘れていいんですよ」
優しい声で、彼の目を覆う。
彼は呻きながら、いやだ、と繰り返す。
「この記憶だけが、私と陛下を繋ぐ、唯一のものなんです……だからどうか、奪わないでください……どうか……うっ、やめろ……いやだっ、アリーセ、アリーセっ……!」
まるで藁にも縋る勢いで繋いでいた手に力を込められる。けれどやがて、その力はゆっくりと弱まっていき、リーヴェスは――クローゼ公爵は安らかな寝顔で呼吸を繰り返した。
次に目覚めた時、きっと彼は前世の記憶を失っているだろう。
確証もないのにルティアにはなぜかそう思えた。
「さようなら、リーヴェス……」
ルティアは前世の夫に別れを告げ、部屋を出た。