前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
ルティアはパチパチと瞬きを繰り返す。
「それも、理由の一つですか?」
「もちろんだ。むしろこれこそ、大事な大事な理由だ」
テオバルトはどこか遠い目をして告げる。
「俺は確かにカイの生まれ変わりだ。だが彼が生きてきた過去は彼だけの人生だ。女王アリーセと生きてきた大事な記憶は、彼だけのもの……。そんなふうに、思っている」
「殿下は前世の自分を切り離してお考えなのですね……」
「最初からじゃない。この世界で生きていくうちに、テオバルトという人間ができていったんだ」
「……確かに奴隷から王子では、いろいろがらりと変わりますね」
納得するルティアにテオバルトが笑う。
「俺が王子で驚いただろう? だが最初は都合がいいと思ったんだ。俺はてっきり、あなたもまた王族に生まれ変わっているものばかりだと思っていたから」
王家の繋がりを辿っていけば必ず会えると思っていた、というテオバルトの言葉にルティアはまさかと思う。
「……もしかして、幼少の頃から外国へ行かれたのはわたしを探すためですか」
「もしかしても何も、それしか理由はないだろう」
ルティアは何と言えばよいかわからなかった。まさか王妃が嘆いていた問題が自分のせいだったとは。
「……おそらくリーヴェスも、同じだったはずだ」
旅行好きで、国のあちこちを巡り歩いていたリーヴェス。彼の行動もまた生まれ変わったルティアを見つけるためだった。テオバルトにそう言われ、ルティアは複雑な気持ちになる。
「だがやつは結局、今のあなたを通して前世の女王陛下を見ていたのだろう」
気にするな、と言われ、小さく頷く。
「……あの、今のわたしに会って、がっかりしなかったですか?」
「まさか。むしろ会うたびに、あなたに惹かれていった」
本当だろうか、とルティアは不安になる。
「ルティア。あなたはアリーセとは違う。俺がそうであるように、アリーセとカイは地獄で何度もその身を焼かれ、今は安らかに眠っている。……あの子のそばに、いるんだ」
ルティアはこちらへ必死に伸ばす、ふっくらとした小さな手を思い出す。涙が零れそうになり、目を瞑った。
「本当に、そう思いますか」
「俺たちが今こうして生きていることがその証拠だ」
大きな掌の温もりに、ルティアもそうだったらいいと思った。いや、きっとそうだ。
「はい。殿下。わたしもそう思います」
テオバルトの言葉を信じるとルティアが微笑めば、彼が身体を引き寄せ、抱きしめた。
「ずっとあなたに伝えたかった。あなたを愛している、と」
「わたしもあなたを愛しています」
大きな背中に両手を回す。
彼女はまた、ありがとうとも伝えた。
狂った自分を止めてくれて。一緒に地獄に堕ちてくれて。
生まれ変わっても愛を捧げてくれて。
「それも、理由の一つですか?」
「もちろんだ。むしろこれこそ、大事な大事な理由だ」
テオバルトはどこか遠い目をして告げる。
「俺は確かにカイの生まれ変わりだ。だが彼が生きてきた過去は彼だけの人生だ。女王アリーセと生きてきた大事な記憶は、彼だけのもの……。そんなふうに、思っている」
「殿下は前世の自分を切り離してお考えなのですね……」
「最初からじゃない。この世界で生きていくうちに、テオバルトという人間ができていったんだ」
「……確かに奴隷から王子では、いろいろがらりと変わりますね」
納得するルティアにテオバルトが笑う。
「俺が王子で驚いただろう? だが最初は都合がいいと思ったんだ。俺はてっきり、あなたもまた王族に生まれ変わっているものばかりだと思っていたから」
王家の繋がりを辿っていけば必ず会えると思っていた、というテオバルトの言葉にルティアはまさかと思う。
「……もしかして、幼少の頃から外国へ行かれたのはわたしを探すためですか」
「もしかしても何も、それしか理由はないだろう」
ルティアは何と言えばよいかわからなかった。まさか王妃が嘆いていた問題が自分のせいだったとは。
「……おそらくリーヴェスも、同じだったはずだ」
旅行好きで、国のあちこちを巡り歩いていたリーヴェス。彼の行動もまた生まれ変わったルティアを見つけるためだった。テオバルトにそう言われ、ルティアは複雑な気持ちになる。
「だがやつは結局、今のあなたを通して前世の女王陛下を見ていたのだろう」
気にするな、と言われ、小さく頷く。
「……あの、今のわたしに会って、がっかりしなかったですか?」
「まさか。むしろ会うたびに、あなたに惹かれていった」
本当だろうか、とルティアは不安になる。
「ルティア。あなたはアリーセとは違う。俺がそうであるように、アリーセとカイは地獄で何度もその身を焼かれ、今は安らかに眠っている。……あの子のそばに、いるんだ」
ルティアはこちらへ必死に伸ばす、ふっくらとした小さな手を思い出す。涙が零れそうになり、目を瞑った。
「本当に、そう思いますか」
「俺たちが今こうして生きていることがその証拠だ」
大きな掌の温もりに、ルティアもそうだったらいいと思った。いや、きっとそうだ。
「はい。殿下。わたしもそう思います」
テオバルトの言葉を信じるとルティアが微笑めば、彼が身体を引き寄せ、抱きしめた。
「ずっとあなたに伝えたかった。あなたを愛している、と」
「わたしもあなたを愛しています」
大きな背中に両手を回す。
彼女はまた、ありがとうとも伝えた。
狂った自分を止めてくれて。一緒に地獄に堕ちてくれて。
生まれ変わっても愛を捧げてくれて。