素直になりなよ。
――やべ、めっちゃキツ…。
高2になってしばらく経ったある日の朝。
俺は朝練を終えて、教室へ辿り着くと、部活バッグとリュックを床におろし、そのまま机に突っ伏した。
最近、全然眠れてなくて、疲れがとれない。
「おい、五十嵐。大丈夫かよ?」
一緒に教室まで来た中野が心配そうに声を掛けてくる。
「おー。また昨日あんまり寝れなかったから、ちょっとキツいな。」
「またかよ?久保田先生に相談した方がよくね?」
久保田先生は、保健師の先生だ。
「この前相談したよ。したら『精神的なものかもね』とか言われて、あんまり色々考えないようにって言われたけど、そんなん、どうやったらできんの。」
「お前、サッカーのこととなると、ホント考えすぎるからな。毎回、五十嵐がチームの改善点とか挙げてくれるのマジでありがたいけど、あんまり気負い過ぎんなよ?」
「気負ってない、気負ってない。あんなん、飯食ってる時に考えつく程度だし。」
「いや、飯の時くらい飯に集中しろって。そういうのが積み重なって眠れないのかもしれないんだから。なんかあったら俺に言えよ?」
「…わかった。さんきゅ。」
そう中野に返したら、中野は労るようにポンポン、と背中を叩いて自分の席へ向かった。
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