素直になりなよ。
「じゃー、今日は席替えするぞー。ササッと済ませて、その後に…」
――席替えか。めんどくせーな。
「ねぇねぇ、五十嵐くん。」
「ん?」
前に座っていたクラスメイトの和田さんが振り向いてこっそり話し掛けてくる。
「席離れちゃったら寂しいな。席離れてもまた話そーね。」
「…?まぁいいけど?」
「やった!えへへ」
満足したのか、和田さんは顔を赤らめた後に前に向き直った。
――和田さんの、この絡みがある方がめんどくせー。
早くも席替えしたくなる。
「じゃあ、くじ回すぞー。さっさと回せよー」
さっそく回ってきたくじを開いて黒板に書かれた場所を確認する。
――窓際か。
今は廊下側。ちょうど真反対の席への移動だ。
「五十嵐くん、どこの席?」
また和田さんが振り向いてきた。
「ちょうどこの列の窓際。」
「えー!離れちゃったー」
――そりゃよかった。
「よし、みんな席確認したかー?じゃあ移動、はじめー。」
その合図と共に、荷物を持って各々席を移動する。