素直になりなよ。
「五十嵐くん、五十嵐くん!」
腕を軽く叩かれ、目を覚ます。
見ると、松田さんが俺の方を振り返ってこっちを見ていた。
「松田さん…」
顔をまともに見たのはこれが初めてかもしれない。
目鼻立ちがはっきりしているワケではないが、パーツの整った顔。
ぽってりしたピンク色の下唇には艶があって一瞬ドキッとする。
「授業終わっちゃったよ。次、移動教室!」
体調はもうすっかり良くなったのか、さっきまで堅かった表情が柔らかくなっている。
「お、おう。起こしてくれてありがとうな。」
「いいよ。あまりにも綺麗に寝てるから、寝てるって最初思わなかったけど。…はい、これあげる。」
「…ガム?」
『眠気ぶっ飛ぶ!』と書かれたチューインガムの包装を持った松田さんが、そこからガムを1枚取って、差し出していた。