素直になりなよ。
「それ、めっちゃ辛いから。絶対効くと思う!これで次の授業はバッチリ起きてられるね!」
そう言って笑った顔にドキドキした。
――松田さんが前の席にいる限り、俺は眠くなると思うんだけど…。
そう思いながら「さんきゅ」と言ってガムを受け取った。
松田さんがまた前を向いた途端にあの香りが戻ってきて、ドキッとする。
その後すぐ、松田さんのところに森元さんが駆け寄ってきた。
「紗英ー!移動教室一緒にいこ。」
「うん、行こう行こう。」
「あ、偏頭痛治った?」
「うん!さっきの授業中にやっと薬が効いたよ。」
「そっか!よかったね。」
――偏頭痛?そっか。
窓の外で本格的に降り出した雨をチラッと眺めて、納得した。
「おい、五十嵐ー!行かねーの?」
声のした方を見ると、中野と坂本が教室の扉のところから手を振っていた。
「おう、今行くー」
そう言って教科書と筆記用具を持つと、中野と坂本に続いて教室を出た。