身代わり婚約者との愛され結婚
15.責務を捨てれば貴方と同じ、なんて御免ですから
遠駆けから戻り一週間。
「レヴィン……」
私以外誰もいない執務室でポツリと呟き眺めるのは、あの日貰ったサギソウのしおり。
“夢からまだ覚めれてないみたい”
この小さなしおりを視界に入れるだけでトクトクと速くなる心臓が私にそう告げているような気がした、そんな午後のことだった。
「アルベルティーナお嬢様、ご来客でございます」
控えめにノックしそう声をかけてきたのは、エングフェルト家に長年勤めてくれている執事長のジョバルサンだった。
「来客? そのような先触れは受けていないわよ」
あっさりとその事実を告げ、次期公爵として一部任せて貰った仕事に戻ろうと視線を目の前の書類に落とす。
「お帰り願いますか?」
「そうね、必ず先に連絡を入れてアポイントを取るように……、ん?」
事前連絡のない今回の訪問。
当然のように断ろうとした私は、ふと違和感を覚える。
「その訪問客って誰なのかしら?」
この公爵家で長年執事長を務めている彼が、客の名前すら私に告げないなんてあり得ない。
「レヴィン……」
私以外誰もいない執務室でポツリと呟き眺めるのは、あの日貰ったサギソウのしおり。
“夢からまだ覚めれてないみたい”
この小さなしおりを視界に入れるだけでトクトクと速くなる心臓が私にそう告げているような気がした、そんな午後のことだった。
「アルベルティーナお嬢様、ご来客でございます」
控えめにノックしそう声をかけてきたのは、エングフェルト家に長年勤めてくれている執事長のジョバルサンだった。
「来客? そのような先触れは受けていないわよ」
あっさりとその事実を告げ、次期公爵として一部任せて貰った仕事に戻ろうと視線を目の前の書類に落とす。
「お帰り願いますか?」
「そうね、必ず先に連絡を入れてアポイントを取るように……、ん?」
事前連絡のない今回の訪問。
当然のように断ろうとした私は、ふと違和感を覚える。
「その訪問客って誰なのかしら?」
この公爵家で長年執事長を務めている彼が、客の名前すら私に告げないなんてあり得ない。