身代わり婚約者との愛され結婚
 ……なんて苦笑した。
 まぁ、ベネディクトの自業自得なのだが。



 ジョバルサンに頼み、いつもレヴィンを案内する温室ではなく、応接室へ通して貰う。

“別に温室でも良かったのだけれど”

 それでも、なんとなくあそこには身代わりにされている婚約者との想い出が詰まっている気がして、ベネディクトを通す気にならなかったのだ。


「どっちが本物かわからないわね」

 
 そんな自分に小さく吹き出しながら応接室へ入ると、落ち着いた様子で紅茶を飲みながらウチのメイドにちょっかいをかけているベネディクトがそこにいた。

 
“これだから不人気なのよ……!”

 世間の令嬢にはこの姿がどう写っているのかは知らないが、少なくとも私を呆れさせるのに十分なその光景に少しげんなりとする。


「お、お嬢様!」
「やぁ、遅かったねアルベルティーナ嬢」

 入室した私を見てホッとした表情になるメイドのレイチェル。
 ベネディクトはというと、そんな現場を目撃されたのに堂々としていて呆れてしまった。


「レイチェルありがとう。もう下がっていいわ」
「またお話しようね、レイチェルちゃん」
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