身代わり婚約者との愛され結婚
 もし食べ方を間違ったとしても、レヴィンと一緒ならそれもきっと笑い話になるから。


 そんな時間を想像した私はふふ、と笑いを溢しレヴィンが到着するのを待っていて――


「……? 遅いわね」

 そろそろ来る、と思った時間から思ったよりも妄想が捗り疑問に思う。

 懐中時計でもう一度時間を確認すると、とっくに待ち合わせ時間の十分前は過ぎていて。


“まさか、事故……!?”

 嫌なことを連想しドキリとする。

「違う、それにまだ約束の時間は過ぎてないもの」

 いつもキッチリ十分前だったレヴィンが最近更に少し早く来るように、十分前から遅れることだってあるかもしれない。

 まだ約束した時間は過ぎてないのだから、当然遅刻なんかでもない。
 だからこそ心配する必要はないのだ、と思った私だったが、嫌な予感で額にじわりと汗が滲んだ。


 不安になった私が玄関前でオロオロと歩いていると、ハンナも少し不安そうにする。

「お嬢様、近くを見に行かせましょうか?」
「まだ、まだいいわ……、だってまだ約束の時間じゃないんだし」

“こんなこと、今まで無かったのに”
< 130 / 269 >

この作品をシェア

pagetop