身代わり婚約者との愛され結婚
 ゴクリと唾を呑んだ私は、少し冷静になろうとゆっくり深呼吸をする。

 けれど時間は刻々と過ぎ、気付けば約束の時間も回っていた。


 流石におかしい。
 この四年間、ずっと時間に正確だったレヴィンが遅れるなんて……!

 バクバクと心臓が逸り、これは本当に誰かを見に行かせるべきかと思った、その時だった。


 ガチャリと玄関のドアが開き、そしてそこに立っていた私の姿を見て一瞬ギョッとした侍従が慌てて頭を下げる。


「ご、ご婚約者様がいらっしゃっております」
「……っ! そ、そのようね」

 私の口から思わず漏れるのはそんな間抜けな一言。

 流石にハンナは表情を変えずにさっと私の近くに控えてくれているが、それでも動揺しているのか彼女の手が少しピクリと動いていた。

 
「えっと、レヴィンは……?」
「は? 今日約束してんのは婚約者である俺だろ?」

 つい口を滑らせた私に怪訝な顔を向けるのは、いつものように身代わりで来たレヴィンではなく、正真正銘の婚約者、ベネディクト本人だった。


 この四年で初めて茶会に顔を出したベネディクトに戸惑いを隠せない。
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