身代わり婚約者との愛され結婚
 彼がそんなことを思っていたなんて、四年も共に過ごしたのに気付かなかった。

 その事実が少し申し訳なくて、

「そんな眩しいティナを泣かせてあげれるようになりたいとずっと願っていたんです」

 そしてその気持ちが堪らなく嬉しかった。


「だから、今俺の腕の中で泣いてくれる君が本当に愛おしい」

 胸をくすぐるように囁かれる甘い言葉に溺れそうになってしまう。
 勝手に許されたような気になり、すがりつきながら涙を流すと、レヴィンがそっと優しく背中を撫でてくれたのだった。
 


“私が彼に出来ることは何かしら”

 溢れるままに涙を流し、彼に包まれ落ち着きを取り戻す。

 こんなに優しい彼に、別の人と結婚するけどずっと側にいて欲しいだなんて口が裂けても言えない。
 そんなこと、言いたくもない。

 けれどもう、この手を諦める自信が私にはなくて。


「……私が、爵位を諦めれば……」

 そうすれば、全てが解決する。


 エングフェルト公爵家には私しか子供はいない。
 けれど例えば養子を取れば。

“まだまだお父様も現役だわ。なら今から後継者教育を施せば家として何も問題ないはず”
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