身代わり婚約者との愛され結婚
 私たちの間に流れる、少し暗い雰囲気といるはずのベネディクトがいないことに何かを察したらしいハンナは、私とレヴィンへ視線を彷徨わせる。

 そんなハンナを咎めることなく、そっと彼女の方へ私の背中を優しく押し出したレヴィンは、右手を胸に当てて深くお辞儀をした。


「アルベルティーナ嬢を、よろしくお願いいたします」


 その一言に、近くにいたジョバルサンも言われた本人であるハンナもぽかんとして。

「私共に頭を下げられる必要はございません」
「けれど、もちろん誠心誠意お守りいたします」

 すぐにそう返事をしてくれた。


 あぁ、私はなんて恵まれているのだろう。

 そう思うと、じわりと視界が揺れる。
 けれどもう、私は沢山泣いたから。


「レヴィン様も、どうかお気をつけて。何かあれば、必ずお知らせください」

 グッと奥歯を噛みしめ涙を堪えそう伝える。

 もっと何かいい言葉があるはずなのに、何も思い付かない自分に少しがっかりしつつ、それでもこれが私だからと真っ直ぐレヴィンの方を見た。

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