身代わり婚約者との愛され結婚
 射貫くように見つめるこのアメジストのような紫の瞳も、太陽の下だけ濃紺に見える美しい髪も大好きだった。

 ベネディクトの身代わりとして散々振り回され、けれど嫌な顔をせず家のために、そしてそんな婚約者のせいで私が心を痛めないようにと気遣ってくれる彼をいつからか愛してしまった。


 そんなダメな私ごと受け止めてくれた。


「……待ってます、いつまでも」
「はい」


 彼はどんな私を好きになってくれたのだろう?
 
 いつかその答え合わせが出来る日を願い、私は凛と去る彼の背中をいつまでも眺めていた。



「私に出来ることは何かしら」

 婚約破棄をするリスクを、それに伴う損失をどう補填するか。
 どう進めればいいのか。


 これから選ぶ選択を、いつか堂々と彼の前に立てる私になれるようにしなくてはならないから。


「嘆く時間は終わりよ」

 ぎゅ、と両手を強く握り私も彼が出ていった玄関に背を向ける。


「ニークヴィスト侯爵令息との婚約破棄に動きます。お父様はいつ帰ってくるかしら?」

 私の言葉を聞き、きゅっと口を結んだ二人が大きく頷いた。
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