身代わり婚約者との愛され結婚
 もちろんそれは両家の同意がある前提であり、この同意こそが今回この婚約破棄に最も難航する部分だろう。

 
“ベネディクトのことを必ず監視しているはずよ”

 何故なら彼はエングフェルト公爵家と繋がるための大切な『商品』なのだから。


「わざと……でしょうか」
「手紙を無視するメリットはないはずよ」

“なら、なんでこんなに遅いのかしら”


 ニークヴィスト侯爵家は広大な領地を持ち、その通行料や土地の貸し出しを生業にしているが、だからといって管理を本人たちがしている訳ではない。

 むしろ顔を広め更なる発展をさせる為に王都にある邸宅で頻繁にパーティーをしているほど。


 だからこそ手紙は翌日には届いているはずなのだが……


「わざと返事を遅らせる理由って何かしら」

 はぁ、と思わずため息を吐くと、すかさずハンナが温かい紅茶を出してくれた。

 
「マーマレードのジャムはお入れしますか?」

 一瞬聞かれた意味がわからずぽかんとして――すぐにレヴィンの好物だと理解する。


「……そうね、少しだけお願い」

 一度も口には出さなかったが甘いものを案外好んでいたレヴィン。
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