身代わり婚約者との愛され結婚
 特にマーマレードジャムをたっぷり入れた紅茶がお気に入りだった。


“どうしているかしら”

 まだたったの10日。
 それなのに、想いを確かめあったらもう恋しくて――


 バシン、と両頬を思い切り叩く。

「お嬢様!?」
「ん、ちょっと弱気になっただけ」

“連絡がないのはレヴィンも頑張ってるからだわ”

 だから私も、と思うが現状待つ以外何も出来ず、もう穴が開くほど何度も繰り返し見たベネディクトの調査報告書に再び手を伸ばした、その時だった。


「アルベルティーナお嬢様、手紙が届いております」
「!」

 控えめなノックをし、入室してきたのはレイチェルだった。


「ありがとう、見せてくれる?」

 ごくりと唾を呑んだ私に手渡されたのは、関係のない夜会の招待や顔繋ぎのお茶会の誘い、そして。


「ニークヴィスト侯爵家からの返事……!」


 少し緊張しながら開けた手紙の筆跡は、相変わらずベネディクトの記名で見たことのない字体。

“何を言われるか察してるでしょうに”

 いや、あのベネディクトのことだ。
 
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