身代わり婚約者との愛され結婚
 婚約破棄ではなく、婚姻日の件で来訪すると勘違いしているかもしれないが――どちらにしよ、本人が書くべきだとは思うが今日はそんなことも気にならなくて。


「三日後よ」
「畏まりました、お嬢様」
「当日は目一杯強い化粧をいたしますね」


 私は私の信じる味方と頷き合った。

 そして三日なんてあっという間に過ぎて。


「本当にお一人で向かわれるのですか?」

 何度も確認する過保護なジョバルサンに笑ってしまう。

「ハンナがいるわ」

 くすりと笑いを溢しながらそう答えると、少し渋い顔をしたジョバルサンが、それでもにこりと笑みを返してくれて。

「公爵家は、とても裕福ですよ」
「あら、もう慰謝料の心配かしら」

 ふふ、と強気に笑ってみせる。
 不安に思っていたことがジョバルサンにバレていたのだろう。

 力強くそう断言され、少しだけ心が軽くなった。


 あれから何度見ても、ベネディクトからはあの程度と言われる以上の醜聞は出なかった。

 
 私の意思を無視し無理やり関係を持とうとしたことは、この婚約破棄を有利に進める手のひとつになるかと思ったのだが。

 
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