身代わり婚約者との愛され結婚
“宿屋にレヴィンと二人で残された”
　

　それどころか、もしあの時レヴィンが頷けば、関係すら持っていたかもしれない。


“短時間で宿屋を出たから、大丈夫だとは思うけれど”

　私とレヴィンを二人きりで宿屋に残したことで、私の方こそ婚約者がいながら不貞を働いた疑惑すら持ち出されるかもしれない。

　結果を見れば、あの一件はレヴィンのお陰でギリギリ致命傷ではないものの、私側からその話を武器のひとつとして持ち出すことが叶わなくなった。


“その結果私の手元にあるのは、最初に入手した彼の火遊びとギャンブルの借金のみね”

「ほんっと、狡猾なんだから……！」

　思わず苛立ちそう口にすると、私の化粧を終えたハンナが仕上げにネックレスを着けてくれる。


「このネックレス……」
「お嬢様に、よくお似合いですよ」
「……えぇ、私もそう思う」


　それは、初めてレヴィンとデートした時に着けた、彼の美しい濃紺の髪色と同じ色の宝石がついたあのネックレスだった。

　
「行くわよ」


　そのネックレスに力を貰った私がハンナと共に部屋を出る。


“きっとレヴィンも頑張っているから”
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