身代わり婚約者との愛され結婚
 こっそり慰謝料について追記してないかと疑いくまなく確認してみるが、どう見ても普通の同意書。

 
「慰謝料すら言われないだなんて」


 本来ならば、正当な理由なく破棄する場合は婚約破棄を申し入れた側が何かしらの補填を相手の家門にする。

 一番わかりやすいもので言えばお金だが、領地の一部や絵画や骨董品というパターンもあるし、厄介なもので言えば仕事の権利書、なんてものもあった。
 

“絶対何かは言われると思ったのに”
  

 今回のケースは、非自体はベネディクトにあるが破棄するほどでもない内容ばかり。

 それどころか、侯爵は私とレヴィンの関係を知ってすらいそうで。


 そこを突けば、結婚なんてしなくても公爵家からいくらでも搾り取ることだってあの侯爵ならば出来たはず。
 

「というか、ハンナはむしろお嬢様が慰謝料を貰われるべきかと思いましたよ」
「気持ち的にはその通りなんだけれどね」
「ニークヴィスト侯爵様側も、何かしら思われたのではありませんか?」
「そう……かしら」

“決してそうは見えなかったけど”

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