身代わり婚約者との愛され結婚
 いつでもどこでもお互いしか見ていない両親を思い出し、なんだかんだで私もレヴィンに口付けをねだったりしたことが頭を過って苦笑した。

 
“結局両親の血を存分に受け継いでるわね”

 レヴィンが受け入れてくれるからと我が儘を言ったこともある。
 連れ回し、思わせ振りなことを言って彼の反応を楽しんだりもしたけれど――


“次こそ本当に”

 彼のことを受け入れられるのだと思ったら、私に纏わりついていたあの嫌な予感が消えてなんだか楽しくなってきて。


「そうね、私、あの二人の娘だものね」
「えぇ、その通りです。とても愛されていらっしゃる、私たち自慢のお嬢様です」

 ふわりとハンナが笑い、そして私をぎゅっと抱き締めてくれた。

 彼女の温かさに包まれ、本当にもう終わったのだと改めて実感する。


「今だけは、お許しください」
「今だけじゃなくても構わないわ」

 私もそっとハンナの背中に腕を回し彼女をぎゅっと抱き締め返す。
 小刻みに震える彼女に気付き、それだけ心配をかけていたのだと理解した。


「幸せな結婚をしてくださいませ」
「……えぇ」
< 170 / 269 >

この作品をシェア

pagetop