身代わり婚約者との愛され結婚
 ハンナにもジョバルサンにも、そして両親にも愛されているのだと改めて実感した私が素直に頷くと、私の様子に父の表情がホッとしたものへと変わる。


「そうか、良かった」
「楽しみにしています、お父様」
「あぁ。私たちもだよ、ティナ」

 オペラを観ながら寝てしまわないように今日は早めに寝なさい、と念を押した父を見送り自身もベッドへ潜り込む。


「元気にしているといいのだけれど」

 レヴィンと観たオペラのヒロインのように、何の憂いもなく彼と過ごせる日を夢見て私はそっと目を閉じたのだった。



“……ま、わかっていたことだったけれど”

「ふふ、馬車の揺れで私の可愛いレディのお尻が痛まないように膝に乗るといいよ」
「やだわ、あなたってば。もうとっくに乗っているじゃない」

 うふふ、あははと楽しそうな声が馬車内に響けば響くほどそれを見守る私の目がジトッと細くなっていく。

“娘の前なのに恥ずかしくないのかしら”

 あえて言おう。
 娘の私は恥ずかしい。

“本当に私を励ますために誘ってくれたのよね?”
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