身代わり婚約者との愛され結婚
 なんて疑いたくなるほど二人の世界を作っている両親にげんなりした私は、ジョバルサンが事前に入手してくれたオペラのパンフレットを開き――


「恋愛もの……」


 両親の気遣いで誘ってくれたとわかっているものの、私そっちのけで更に盛り上がるだろう二人を想像し項垂れた。

 そして私のそんな予想は当然のように的中して。


“やっぱり!”

 恋愛もののオペラで気分が盛り上がったらしい二人は馬車内以上に自分たちだけの世界を作っていた。

 
 今回のオペラは、女神様と騎士が出会い恋をするというある意味王道の悲恋ものだった。

 偶然出会った二人は戦争という運命で引き裂かれ、禁忌だとわかっていながら恋人の騎士を死なせないために女神様が力を与える。

 そのお陰もあって無事に武勲を立てた騎士は、褒賞として領地を与えられそこに想い人である女神様を迎えようとし――

“禁忌に手を出した女神様は罰として存在を消されてしまうなんて”


 自分を犠牲にしてでも守りたいと思うほど、女神様にとってその恋人は大切だったのだろう。
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