身代わり婚約者との愛され結婚
 そして女神様を失った騎士は、一人女神様を想い生涯を終えるというストーリーだった。


「君が私だけの女神でいてくれるこの世界に感謝しなくてはならないね」
「私も、あなたが私だけの騎士でいてくれるこの世界に感謝するわ」

 娘そっちのけで盛り上がる二人を無視し、はぁぁ、と一際大きなため息を吐いた私は馬車でも見ていたパンフレットに再び視線を落として。


“この悲恋で泣けないのは、絶対に一緒に観る相手を間違えたからよ!”


 ストーリーは素晴らしかった。
 演者たちも最高だったが、席が悪かった。

 いや、エングフェルト公爵家で取っていたカーテン付きのボックスだったのだが。

 これはいつかレヴィンと絶対リベンジしたい、と思いながら苦笑する。


“結局私はこんな時でもレヴィンのことばかりだわ”

 自然と彼の事を考えていると気付いた私は、相変わらずいちゃつく両親を横目で見て、そしてそんな二人の娘ということなのだと実感した。


 劇場ホールも称賛やすすり泣く声が至るところから聞こえ、思わずきょろりと辺りを見回してしまう。
 これは本当に絶対絶対リベンジしたいと思い――……

「あ」
< 176 / 269 >

この作品をシェア

pagetop