身代わり婚約者との愛され結婚
 ボスン、とベッドに倒れ込んだ私が枕に顔を埋める。
 今一番辛いのはレヴィンなのだから、私が泣くのは最低だ。
 

「ごめんなさい、私のせいで……っ」

 必死に溢れそうになる涙を堪えていると、私の視界の端にピンク色がちらりと映る。

“?”

 ズズッと鼻を啜りながら顔を向けると、枯れるまで寝室に飾っていたからだろうか?
 
 倒れ込んだ拍子にどこからか落ちてきたのか、アルストロメリアの花びらが一枚だけ落ちていた。


“花言葉は『未来への憧れ』――”


「……そうよ、レヴィンに待ってるって約束したわ」

 何より彼が独断で全てを壊すような人ではないことを、身代わりの婚約者としての四年間で十分すぎるほど理解していて。


 ぐっと手の甲で涙を乱雑に拭う。

“優先順位を間違えないで”とレヴィンは言っていた。

 何が正解なのかはわからない。
 けれど、嘆き立ち止まる私は絶対不正解だから。


 現状公爵家として、クラウリー伯爵家を助ける方法はない。

 介入する理由が作れず、またこれはニークヴィスト侯爵家とクラウリー伯爵家が決めたことだからだ。
 
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