身代わり婚約者との愛され結婚

「もちろん一線は越えておりませんわ。けれど、外で押し倒された子もいて……」
「私は断ったらわざとワインをかけられましたの」

　あまりにも酷い自分の元婚約者に頭が痛くなる。

「本当に申し訳ありません」
「アルベルティーナ様は何一つ悪くはありませんから！」

　堪らず謝罪すると、そんな私に驚いたらしいマリエッテ様がガタッと立ち上がりながらそう言ってくれた。

「もしかしてマリエッテ様も？」
「えぇ。断ると、下級貴族風情が……だそうです」

　カラッとマリエッテ様は笑い飛ばすが、だからと言ってベネディクトの言動は許されるべきではないものばかりで。　

“あの男！！”

　内心思い切り罵倒するが、口に出さなかったことをむしろ誉められてもいいくらいだろう。


「本当は公爵令嬢であるアルベルティーナ様を、私程度がご招待するなんておこがましいかと思ったのですが」

　少し照れ臭そうに鼻をかいたマリエッテ様は、すぐににこりと笑顔になって。

「それでも、どうしてもお礼を言いたいねって皆と話していたんです。ニークヴィスト侯爵令息様を盛大にフッてくださりありがとうございます！」