身代わり婚約者との愛され結婚
 私が思わず見入っていると、レヴィンがぽつりと口を開く。

「新しい商品として全面的に売り出す予定のものの一つなんです」
「新しい商品?」

 貴族の家に絵画は好んで飾られる。
 新しい絵画として、押し花で作られた肖像画や風景画が飾られている絵に混ざっていったとしたら。

「それは素敵だわ……!」

 筆とはまた違ったタッチの、その色鮮やかな絵をきっと沢山の貴族が欲しがるだろうとそう思った。

「押し花なら、枯れる心配をしてニークヴィスト侯爵領を通らなくていいですしね」

 少し悪戯っぽく笑ったレヴィンの言葉に一瞬きょとんとした私は、すぐに釣られて吹き出してしまう。

「そうね、三倍の時間はかかるかもしれないけれど、三倍の通行料を払う必要はないってことね」
「えぇ、そうです」

“ベネディクトが言っていたことってこういうことだったんだわ”

 ベネディクトはクラウリー伯爵家から搾り取っている予定だった、と口にしていた。
 もちろん搾り取る方法はいきなり三倍にも上げられた通行料だろう。
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