身代わり婚約者との愛され結婚
30.売り込みというご提案
「後日改めてお伺いします」
クラウリー伯爵家の馬車で家に帰った私。
馬車を降りる前にそうレヴィンが言い、私も頷くがなかなか立ち上がる気になれなくて。
「ティナ?」
「あ、えっと……」
“また会えなくなるとか、ないわよね?”
私の薬指にはレヴィンから貰った指輪がキラリと輝いていて、だから大丈夫だと思いながら……それでも、連絡も取れず状況もわからないまま過ごした数ヶ月が私の心に小さな影を落としていた。
そんな私の不安に気付いたのか、レヴィンが私の頬に口付けをする。
「エングフェルト公爵様のアポイントが取れ次第お伺いします。俺こそ待つ気はもうないんですから」
「……えぇ」
耳をくすぐるように甘い約束が囁かれると、陰った心がふわりと温かいものに包まれるようで。
「んっ」
そのままそっと重ねられた唇に身を委ねる。
何度も角度を変えて啄むように重ねられた唇は、そのまま重ねるだけで離れてしまった。
“もう少し深く――”
久しぶりの感覚が心地よく、もっともっとと彼の方に顔を向けるが、そんな私を避けるように額に口付けをしたレヴィンが小さく咳払いする。
クラウリー伯爵家の馬車で家に帰った私。
馬車を降りる前にそうレヴィンが言い、私も頷くがなかなか立ち上がる気になれなくて。
「ティナ?」
「あ、えっと……」
“また会えなくなるとか、ないわよね?”
私の薬指にはレヴィンから貰った指輪がキラリと輝いていて、だから大丈夫だと思いながら……それでも、連絡も取れず状況もわからないまま過ごした数ヶ月が私の心に小さな影を落としていた。
そんな私の不安に気付いたのか、レヴィンが私の頬に口付けをする。
「エングフェルト公爵様のアポイントが取れ次第お伺いします。俺こそ待つ気はもうないんですから」
「……えぇ」
耳をくすぐるように甘い約束が囁かれると、陰った心がふわりと温かいものに包まれるようで。
「んっ」
そのままそっと重ねられた唇に身を委ねる。
何度も角度を変えて啄むように重ねられた唇は、そのまま重ねるだけで離れてしまった。
“もう少し深く――”
久しぶりの感覚が心地よく、もっともっとと彼の方に顔を向けるが、そんな私を避けるように額に口付けをしたレヴィンが小さく咳払いする。