身代わり婚約者との愛され結婚
 けれど、まさかここまで警戒するなんて思っていなかった私は驚きつつも思わず吹き出してしまった。

 
「笑っている場合ではありません! それにこの美しいお嬢様の姿を見れば必ず骨抜きになるかと思います!」
「それでこんなに締めていたのね」

 確かにハンナが全力で締めてくれたお陰でシルエットが美しい。

 
“別に太っているわけではないはずだけれど”

 ちらっと視線を落とすのは胸元。
 
 豊満ではない……というか、かなりささやかな膨らみしかない胸のせいで、体型に合わせたドレスだとどうしても寸胴に見えてしまうのだ。

 
“流石にこれは苦しすぎる気もするけど”

 しかしこれは見向きもされず役割をレヴィン様に押し付けていたベネディクトが私と向き合う絶好の機会。

 それを考慮し、相手にされていなかった私を少しでも良く見せるためにハンナが頑張ってくれた。

 自分を案じてくれるその気持ちが嬉しくないはずなんてなく、私はこの温かい気持ちに胸がいっぱいになる。


「わかったわ。折角ハンナが頑張ってくれたんだもの、食事は諦めてベネディクトをドキドキさせてみせるから」
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