身代わり婚約者との愛され結婚
 そっと立ち上がった父はそのままレヴィンの隣に回り、優しく肩を叩いて。
 なんだかその光景を見るだけで、私の視界もどんどん滲んだ。


「ティナも、レヴィン君も。幸せな結婚をしてくれたら嬉しいよ」
「はい、お父様……!」


 応接室に温かい空気が流れる。
 近くに控えてくれていたハンナと、ジョバルサンまでもか鼻を啜っていて、私は涙を流しながらうっかり笑ってしまったのだった。



 
「そうそう、そのニークヴィスト侯爵家なんだけど」

 あ、そうだ、とまるで今思い出したと言わんばかりに両手をポンと叩いた父が、この穏やかな雰囲気をぶち壊すような黒い笑顔を貼り付けて。

 
「ベネディクト君は投獄が決まったよ、まぁティナに危害を加えたんだから当たり前だよね」

 ははは、と笑いながらとんでもない爆弾を落とされた私がギョッとする。


「その責任を取る形で、ニークヴィスト侯爵領も減るみたいだねぇ。あ、ちなみに没収された領地は慰謝料としてウチのになるから、クラウリー家はいつでもタダで通っていいよ?」
「えっ」
「な、何を言っておりますの……!?」
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