身代わり婚約者との愛され結婚
 正式な婚約者になった日から、レヴィンはエングフェルト家に住んでいた。

“表向きは、彼のクラウリー領が少し遠いこととエングフェルト領で生花の栽培を始めるためなのだけれど”

 もちろんその理由も嘘ではない。
 
 ベネディクトは元々王都の別宅に住んでいたが、レヴィンはクラウリー伯爵家に住んでいたので会ったり、公爵家での勉強をするため頻繁に通うには遠かった。

 それに、父の提案でもあるエングフェルト領での生花の栽培も実現させるべく、花の育ちやすい環境や土、またその土地に合わせた肥料などの研究をするという仕事もある……のだが。
 

“やっぱり一番は、一緒にいたいから”

 月に一度しか会えなかった頃が想像できないほど、彼と過ごすのが心地よくて嬉しくて。


「……嬉しいですよ、結婚出来る日をずっと待ち望んでいたんです」
「本当に?」
「えぇ」
「甘い紅茶も取られちゃったのに?」

 甘えるようにレヴィンの肩に頭を預けそう聞くと、くすくすと笑いながらレヴィンに肩を抱き寄せられた。


「……明日、もっと甘いものを貰う予定ですから」
「っ!」
< 236 / 269 >

この作品をシェア

pagetop