身代わり婚約者との愛され結婚
 何がキッカケでどんな噂にねじ曲げるかわからない社交の世界。
 私とレヴィン様の間に何一つやましいことなどなかったとしても、きっと代理で彼が来ることはなくなるだろう。

“そうなれば、レヴィン様はレヴィン様のお相手を探せるわね”

 そんな考えに行き着いた私の心が少しだけ重くなった。


「入場だ」
「はい」

 ぽつりとかけられた声に意識を目の前へ戻した私は、そっと彼の腕に手を絡める。

 寄り添った私たちを確認したエングフェルト家の執事がさっと扉を開いてくれた。


 にこりと微笑みながら足を進めると、さすが公爵家主催のパーティー。

 私のお祝い、というよりエングフェルト家との顔繋ぎをしようとかなりの人数が来てくれていて。


「本日はご成人、誠におめでとうございます」
「ありがとうございます」

“これ、見張り以前の問題で食べる時間なんてなかったわね……!?”


 開始して間もないというのに既に疲れはじめていたものの、それでも自身主催のパーティーだからとなんとか気合いで誤魔化す。
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