身代わり婚約者との愛され結婚
 三倍の時間をかけた結果、天気や気温の変化で花が先に咲いてしまったり逆に全く咲かなくなってしまったら……


「それが『弱い』理由ですのね」

 ぽつりと溢すように呟いた私の言葉にレヴィン様は返事をしなかったが、少しだけ瞳を伏せられたのを見て確信した。


“万一歯向かい機嫌を損ねて通れなくなってしまったら、仕事が出来なくなってしまうのね”

 友人だがどこか対等ではないその歪な関係。
 だからこそ彼はこの四年間、文句も言わずにベネディクトの言う通りひたすら身代わり婚約者の役割をこなしていて。


「今日は、楽しい日にいたしましょう」
「アルベルティーナ嬢?」
「ティナ、で構いませんわ」
「それは……」

 愛称で呼ぶように言うと、流石に戸惑った表情になるレヴィン様。

 けれど私はそんな彼を無視してにこりと笑顔を向けた。

「だって私たち、今は婚約者同士なのですから!」
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