身代わり婚約者との愛され結婚
「……ティナに、こちらの花束を。受け取ってくださいますか」
「はい、もちろんですわ。レヴィン!」

 ちゃんと言い直された呼び方に思わず私の頬が緩むと、入室した時は変わらなかった表情にふわりと笑みが灯る。

 それだけのことなのに、なんだかとても嬉しくなった。


「可愛い花。色とりどりでとても美しいわ」
「アネモネの花束です」
「今日もベネディクト様から?」

 実際そうであろうとそうでなかろうと、レヴィンは肯定する。
 何故なら彼は本物の婚約者の『身代わり』でしかないから。

 ――そう、思っていたのだが。


「俺から、です」
「え?」
「だからその、俺から、です」
「そ、そうだったんですか⋯!?」

 その予想外の答えに唖然とし、それと同時に心臓がドクドクと暴れだした。


“レヴィンから!”


 きっと前回も、前々回もレヴィンが選んだ花束だった。
 けれどそれはあくまでもベネディクトの代理として選んだものだったのに、この花束は……


「どうしよう、とても嬉しいわ」
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