身代わり婚約者との愛され結婚
 いつもはすぐにメイドに頼んで私室に飾って貰うが、なんだか今は手放すのが惜しくぎゅっとそのアネモネの花束を抱き締める。

 赤やピンクの色もあるが、青と白が多めに束ねられたこの花束を見て、レヴィンはこういったブルー系統の花が好きなのかしら? なんて思った。


“最初に貰ったスカビオサの花束は綺麗な薄紫で、ハナニラの花束も青かったし”

 花を潰してしまわないように注意しつつ抱き締めていると、ふと彼の腕がキラリと光る。


「……それ、つけてくださったのね」
「これは代理としてではなく、俺がいただいたものですから」

 少し気恥ずかしそうしながらレヴィンが着けているカフスボタンを撫でる。
 そのカフスは、私の瞳と同じ薄水色をしていた。

 

「ねぇ、今日はお茶を飲んで行くでしょう?」
「ティナが許可をしてくれるなら」
「まぁ! レヴィンなら大歓迎よ、だって今は私の婚約者でしょう?」

 少し悪戯っぽくそう口にすると、その悪戯に乗る少年のようにレヴィンも笑みを浮かべる。

 悪巧みをする子供のように、私たちは席についた。


「そういえば、今流行りのオペラがあるそうです」
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