身代わり婚約者との愛され結婚
 あまり表情の変わらないレヴィン様が、ポツリと口にする褒め言葉。

 そのクールな雰囲気に似合わず実は甘いものが好きらしく、紅茶にジャムを入れたものを好んで飲む。
 そんなレヴィン様の好みを、私はいつから知っていたのだろう。

 
“本当、私が婚約してるのって誰なのかしら”


 形式上の婚約者より、この身代わりで来ている彼の方が本物の婚約者のように時を重ねている……なんて、そこまで考えた私は、その考えを頭から追い払うように小さく顔を左右に振った。


“……全然、知らないものね”

 身代わりで来ているだけだからか、いつもポーカーフェイスのレヴィン様は決して踏み込んでは来ない。

 相手からは質問されないし、私からも特別質問したりしないのは、この茶会が『婚約者同士の仲を深める』ためのものだからだ。

“私たちが育んだところで意味などないもの”

 それをレヴィン様もわかっているのだろう。
 
 この四十六回もの茶会で知ったのは彼が必ず約束の時間の十分前に来ることと、紅茶にジャムを入れ甘くして飲むのが好きだということくらいしかなくて。

 
「でもそれって、少し寂しいわ」
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