身代わり婚約者との愛され結婚
 そんなまさに大逆転とも言えるストーリーで。


“あり得ないわ”

 ――そう、これはあくまでも物語。

 そもそも王族のいる前で婚約破棄を持ち出すだなんて、実際ならば場を乱し陥れたとして男の方が断罪されるだろう。

 それに王太子の結婚は誰よりも政略を重視せねばならず、目の前で可哀想な令嬢がいたから、と同情で進めるなんてこともあり得ない。


「……面白かったわ」
「幸せになるまでが丁寧に描かれていて応援したくなりましたね」
「それに、どこか庶民的であり身分があるのに偉ぶらないからこそまるで身近な友人のようにも感じられた」


 穏やかに微笑むレヴィンに私もそう返す。
 あり得ないとは思っても、面白いと思ったのも真実で、レヴィンが言ったように応援したくなったのも事実。


 物語として本当に良くできており、この熱く燃え上がるような恋心にトキメキだって感じた、の、だが。


“でも、あくまでもこれは物語”


 序盤で起きた婚約破棄の騒動。

 ベネディクトから婚約破棄を言い出すことはなく、もし言い出したとしても私たちの婚約を破棄することは出来ない。

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