身代わり婚約者との愛され結婚
 まるでプレゼントをねだる子供のような口調で念押してしまう。

 両親にもこんな言い方したことなんてなかったのに、思わず口から出てしまった私の言葉をにこにこと聞いていたレヴィンは一際嬉しそうに微笑んだ。

 
“気分を悪くしたっておかしくないのに”


 これは彼が優しいからか、それとも相手が私だからなのか。

“後者だったら嬉しいなんて”

 そっと心の奥底に隠した私は、もう一度ぎゅっと貰ったアルストロメリアの花束を抱き締めたのだった。



 そんなお茶会から数日。
 

「レヴィンからだわ!」

 クラウリー伯爵家のシーリングスタンプで封留めされた手紙を受け取った私はいそいそと寝室に飛び込む。

 今寝室の窓際に飾られているのは先日貰ったばかりのアルストロメリアの花だ。

 
“花言葉は、未来への憧れ――”


 もしかして本当にレヴィンも私と同じ夢を見てくれているのかもしれないと思うと、きゅうっと胸が締め付けられて。


「っと、早く中を見なくっちゃ!」
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