アンハッピー・ウエディング〜前編〜
夕食の為の食材は、さっきスーパーに行ったときに買ってきた。

この通りキッチンも綺麗にしたし、調理道具一式も持ってきてあるので、料理は出来るのだが…。

…果たしてあのお嬢さん、手作りの料理なんて食べるのだろうか?

家の中に、これでもかとレトルト食品とカップ麺があるから…。

もしかして、他人の手料理は食べられないタイプだったりする?

少なくとも、食に並々ならぬこだわりがあるタイプではなさそうだ。

一流の料理人と、一級品の食材で作った料理しか口にしない女だったらどうしようかと思っていたが。

ジャンクなカップ麺を食べまくっているのを見たところ、そういうことはなさそう。

むしろ、食に興味がないタイプなのかも。

…カップ麺だろうが冷食だろうが、好きなもの食べれば良いと思うけどさ。

何食べようと、それは本人の勝手だろ?

だが、あのお嬢さんに関しては、そうは行かない。

何と言っても、お嬢さんの身の回りの面倒を見るのは、俺の役目なのだ。

その為に、わざわざ俺が花婿に選ばれたようなものだ。

俺がついていながら、お嬢さんが添加物たっぷりのカップ麺を食べ過ぎて、生活習慣病にでもなってしまったら。

それすなわち、俺の監督不行き届きとして責任を追及されることになってしまう。

それは遠慮したい。

よって今日から、俺がお嬢さんの毎日の食事を用意することになる。

そこで気になるのが、この、とても健康的とは言えないお嬢さんの食生活である。

とんでもないグルメじゃなかったのは有り難いんだが…。

え?毎日カップ麺で良いんだから、楽じゃないかって?

そりゃあ、俺の役目食事を用意する側としては、楽っちゃあ楽なんだけど…。

連日カップ麺じゃ、栄養バランスがガッタガタだろ?

若いうちはまだ良いとしても、怖いのは歳を取ってからだな。

今のうちに改善出来るものなら、しておきたい。

果たして、俺の言うことに耳を貸してくれるのだろうか。

これでも、料理はそこそこ上手なつもりなんだが…。

…とりあえず、やるだけやってみるか。

出来るだけ、女の子が好きそうなメニューにしてみよう。
< 10 / 505 >

この作品をシェア

pagetop