アンハッピー・ウエディング〜前編〜
初夏迎える頃の章1
…さて、週が明けて、休日が終わって月曜日。

今日から、いよいよ授業が始まる。

俺はこの日も、朝から朝食とお弁当を作って用意していた。

すると。

「おはよー悠理君…」
 
「おはよう…の前に、着替えてこいって…」

もう何度言ったことか。

起きてきたお嬢さんは、相変わらず俺のお古ジャージ姿だった。

二階で。制服に。着替えてから降りてこいって。

何度も言ってるでしょうが。

しかしお嬢さんは、反省している様子は全くなく。

ふわぁぁ、と大あくびをしていた。

…豪快過ぎるだろ。口元を隠しなさい。

少しは恥じらいというものがないのか。このお嬢様は。

俺の前なら別に良いけど、学校でやるなよ。

「今日は早いんだな…。もしかして、早く登校しないといけないとか?」

いつもお嬢さんが起きてくる時間には、1時間近く早い。

もしかして、今朝は用事があるとか?

日直だから早めに登校しなきゃいけないとか、そういう事情?

それならそうと、昨日のうちに言ってくれたら良かったのに。

朝食の準備、まだちょっと…。

…と、思ったが。

「ふぇ?ううん。早く夢から覚めただけ」

「…あ、そう…」

どうやら、早くに目が覚めただけらしい。

なんだ。急いでる訳じゃなかったのか。

良かった。

「悠理君、私が昨日見た夢の話を聞いてくれる?」

「夢?何の夢だったんだ?」
 
と、気軽に尋ねると。

「昨日はね、男の人と男の人がルームシェアして、ベッドでラブラブしてる夢見たんだー」

特大級の爆弾が飛んできた気分。

「ぶはっ…」

思わず吹き出してしまった。

好奇心いっぱいの顔で、お前は何を言い出すんだ。

腐女子?腐女子なのか?

個人の趣味は自由だと思うけど、俺にその趣味はないから。

出来れば、俺の前では内緒にしててもらえるか。

「男の人同士なのに、すっごく仲良しなんだよ。羨ましいね」

「…何が…?」

欲求不満なのか?

「それでね、その男の人達が…」

もう良い。よく分かった。

「はいはい、分かった。分かったから。早く顔を洗って、着替えてこい」

これ以上、朝から腐った夢の話を聞きたくなかった。

ごめんな、全国の腐ったお友達。
 
でも、俺は腐ってないから。そういう話は遠慮したい。

「うん、分かったー」

お嬢さんは頷いて、顔を洗いに向かった。

やれやれ。朝から賑やかなことで。
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