アンハッピー・ウエディング〜前編〜
学校が始まってから、一週間経つけど。
昼休みに、乙無が食事をしているところを見たことがない。
俺みたいにお弁当を持ってきてる訳でもないし、雛堂みたいに菓子パンを持参してる訳でもなく。
新校舎と違って、旧校舎にはカフェテリアどころか、学食もないし。
全く何も食べずに、ただじっと窓の外を見つめているか、分厚い文庫本を開いているか、のどちらかである。
「あれ、何やってんだろうな?星見の兄さん、分かる?」
「さぁ…俺に聞かれても」
「腹減らねぇのかね?」
…だから、俺に聞かれても分からんって。
すると。
「…何をじろじろ見てるんですか」
俺達がひそひそ話をしているのが、乙無の耳に届いたらしく。
乙無は不機嫌そうな顔をして、こちらを振り向いた。
地獄耳か。
「乙無の兄さん、さっきから外見て何やってんの?」
「何やってんの、じゃありませんよ。僕は忙しいんです」
呼吸するのにか?
「邪神イングレア様とお話しているんですよ」
…とのこと。
ただたそがれてるように見えたけど、脳内で神様と喋ってたらしい。
へー、ふーん。そうなのか。
「神様と何喋ってんの?今日は良い天気ですね、とか?」
「そんな下らない会話をするはずないじゃないですか。イングレア様が真の力を取り戻す為に、罪の器を満たさなきゃならないんです。それが邪神の眷属たる、僕達の役目です」
謎のドヤ顔。
はぁ、そりゃまた大変そうな役目だな。
…時給、いくらなんだろ。
「また、それを阻もうとする忌々しい巫女共を始末するのも、僕達の役目なので。その為にイングレア様のお言葉を…」
「ふーん、あっそ。それはそれとして、先週からずっと思ってたんだけどさー。乙無の兄さん、昼飯食わねぇの?」
「食べませんよ。脆弱な人間と違って、邪神の眷属たる僕には食事の必要がありませんから」
ドヤァ。
それって、自慢気に誇ることなのか?
「…あれ、マジなのかな?」
「さぁ…。痩せ我慢してるだけじゃね?」
「キャラ作りの為に、昼飯まで我慢すんのかよ…。邪神の眷属も大変だな」
乙無に聞こえないよう、雛堂と二人でひそひそ。
しかし。
「聞こえてますよ。失礼な」
地獄耳の乙無には、ばっちり聞こえていたらしい。
それは悪かったな。
「そうか、それは悪かったな…。でも、昼飯はちゃんと食った方が良いと思うよ、自分。背ぇ伸びねぇぞ」
同感。
邪神の眷属(?)だからって、腹ぺこを我慢するのは良くない。
それなのに。
「大きなお世話です」
とのこと。
意思は固いようだ。そこまでして我慢するか。そうなのか。
食べるも食べないも、個人の自由…だとは思うけどさ…。
昼休みに、乙無が食事をしているところを見たことがない。
俺みたいにお弁当を持ってきてる訳でもないし、雛堂みたいに菓子パンを持参してる訳でもなく。
新校舎と違って、旧校舎にはカフェテリアどころか、学食もないし。
全く何も食べずに、ただじっと窓の外を見つめているか、分厚い文庫本を開いているか、のどちらかである。
「あれ、何やってんだろうな?星見の兄さん、分かる?」
「さぁ…俺に聞かれても」
「腹減らねぇのかね?」
…だから、俺に聞かれても分からんって。
すると。
「…何をじろじろ見てるんですか」
俺達がひそひそ話をしているのが、乙無の耳に届いたらしく。
乙無は不機嫌そうな顔をして、こちらを振り向いた。
地獄耳か。
「乙無の兄さん、さっきから外見て何やってんの?」
「何やってんの、じゃありませんよ。僕は忙しいんです」
呼吸するのにか?
「邪神イングレア様とお話しているんですよ」
…とのこと。
ただたそがれてるように見えたけど、脳内で神様と喋ってたらしい。
へー、ふーん。そうなのか。
「神様と何喋ってんの?今日は良い天気ですね、とか?」
「そんな下らない会話をするはずないじゃないですか。イングレア様が真の力を取り戻す為に、罪の器を満たさなきゃならないんです。それが邪神の眷属たる、僕達の役目です」
謎のドヤ顔。
はぁ、そりゃまた大変そうな役目だな。
…時給、いくらなんだろ。
「また、それを阻もうとする忌々しい巫女共を始末するのも、僕達の役目なので。その為にイングレア様のお言葉を…」
「ふーん、あっそ。それはそれとして、先週からずっと思ってたんだけどさー。乙無の兄さん、昼飯食わねぇの?」
「食べませんよ。脆弱な人間と違って、邪神の眷属たる僕には食事の必要がありませんから」
ドヤァ。
それって、自慢気に誇ることなのか?
「…あれ、マジなのかな?」
「さぁ…。痩せ我慢してるだけじゃね?」
「キャラ作りの為に、昼飯まで我慢すんのかよ…。邪神の眷属も大変だな」
乙無に聞こえないよう、雛堂と二人でひそひそ。
しかし。
「聞こえてますよ。失礼な」
地獄耳の乙無には、ばっちり聞こえていたらしい。
それは悪かったな。
「そうか、それは悪かったな…。でも、昼飯はちゃんと食った方が良いと思うよ、自分。背ぇ伸びねぇぞ」
同感。
邪神の眷属(?)だからって、腹ぺこを我慢するのは良くない。
それなのに。
「大きなお世話です」
とのこと。
意思は固いようだ。そこまでして我慢するか。そうなのか。
食べるも食べないも、個人の自由…だとは思うけどさ…。