アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「悠理君のお弁当、凄く美味しかったんだよ」
「そう…。そりゃどうも…」
「あのね、いつも食べてるカフェテリアのランチより美味しかった」
それは言い過ぎだっての。
カフェテリアのシェフに失礼だろ。
お嬢さんがそんな、見せびらかしながら食べるなら…もうちょっと手の込んだ弁当を作れば良かった…。
でも、しょうがないだろ。朝突然言われて、自分の分のついでに作ったもんだから…。
手の込んだものを用意しようにも、材料も時間もなかったし…。
「…」
過ぎたことは、もうどうしようもない。
新校舎のお嬢様達に、自分の作った弁当を見られた羞恥心でいっぱいだったが。
「あんた…それで良いのか…?」
「ふぇ?何が?」
「…」
当のお嬢さんが全く気にしていないから、俺が一人で恥ずかしがってるのも馬鹿馬鹿しい気がする。
「ウインナーがタコさんでね、嬉しかった。食べちゃうのが勿体無くて、そのまま残しておこうかなぁと思ったんだ」
「残すなよ…。普通に食えよ」
どうやら、タコさんウインナーに感激したらしい。
幼稚園児かよ。
どう思っただろうなぁ、お嬢さんのクラスメイト達は。
「あの」無月院家のお嬢様が、タコさんウインナーを見せびらかしているなんて…。
その姿を想像して、俺は思わず悶絶しそうになった。
それなのに、当のお嬢さんは全く気にしてないし…。
…分かった。分かったよ。
もう忘れることにする。
今日のことはもう忘れて、明日からはまた…。
しかし、あろうことかお嬢さんは。
「ねぇ、悠理君。明日もお弁当作るの?」
「え?そりゃ作るけど…自分の分は」
「私も食べたい。私も、明日も持っていっちゃ駄目?」
まさかの、明日もリクエスト。
マジで?定着させるつもりなのか?今日だけじゃなくて?
やたら弁当に喜んでるから、そうじゃないかなぁとは思ってたけど…マジで?本気で?
「ま、また持っていくのか…?しばらく毎日、昼休憩お弁当にするつもりか?」
「…駄目なの?」
「…いや、駄目じゃないけど…」
毎日お嬢さんの分の弁当も作るなんて。
手間の問題じゃなくて、俺の羞恥心の問題。
毎日のように、俺の手抜き弁当が新校舎のお嬢様達にご開帳されてしまうことになるのを危惧しているのだ。
…何処の貧乏シェフが作った弁当だよ、って小馬鹿にされるんだろうな…。
「本当?やったー。明日も悠理君のお弁当だ」
お嬢さん、両手を上げて万歳していた。
そんな喜ぶようなことじゃねぇだろ。
「悠理君、悠理君。明日もタコさんウインナーが良い」
「分かった、分かった」
やるよ。やりますよ。やれば良いんだろ。
…明日からは、もうちょっと早起きして…いつもより手の込んだ弁当にしよう。
更なる手間が増えて、俺はうんざりしなければならないところだったが…。
「朝も、昼も、夜も悠理君のご飯を食べられるなんて。幸せだねぇ。明日もタコさんだと良いなぁ」
「…」
お嬢さんが妙にテンション高くて、やたらと嬉しそうだからか…。
不思議と、愚痴や文句は出てこなかった。
幼児にお弁当のリクエストされた母親って、もしかしてこんな感じなんだろうかと思った。
「そう…。そりゃどうも…」
「あのね、いつも食べてるカフェテリアのランチより美味しかった」
それは言い過ぎだっての。
カフェテリアのシェフに失礼だろ。
お嬢さんがそんな、見せびらかしながら食べるなら…もうちょっと手の込んだ弁当を作れば良かった…。
でも、しょうがないだろ。朝突然言われて、自分の分のついでに作ったもんだから…。
手の込んだものを用意しようにも、材料も時間もなかったし…。
「…」
過ぎたことは、もうどうしようもない。
新校舎のお嬢様達に、自分の作った弁当を見られた羞恥心でいっぱいだったが。
「あんた…それで良いのか…?」
「ふぇ?何が?」
「…」
当のお嬢さんが全く気にしていないから、俺が一人で恥ずかしがってるのも馬鹿馬鹿しい気がする。
「ウインナーがタコさんでね、嬉しかった。食べちゃうのが勿体無くて、そのまま残しておこうかなぁと思ったんだ」
「残すなよ…。普通に食えよ」
どうやら、タコさんウインナーに感激したらしい。
幼稚園児かよ。
どう思っただろうなぁ、お嬢さんのクラスメイト達は。
「あの」無月院家のお嬢様が、タコさんウインナーを見せびらかしているなんて…。
その姿を想像して、俺は思わず悶絶しそうになった。
それなのに、当のお嬢さんは全く気にしてないし…。
…分かった。分かったよ。
もう忘れることにする。
今日のことはもう忘れて、明日からはまた…。
しかし、あろうことかお嬢さんは。
「ねぇ、悠理君。明日もお弁当作るの?」
「え?そりゃ作るけど…自分の分は」
「私も食べたい。私も、明日も持っていっちゃ駄目?」
まさかの、明日もリクエスト。
マジで?定着させるつもりなのか?今日だけじゃなくて?
やたら弁当に喜んでるから、そうじゃないかなぁとは思ってたけど…マジで?本気で?
「ま、また持っていくのか…?しばらく毎日、昼休憩お弁当にするつもりか?」
「…駄目なの?」
「…いや、駄目じゃないけど…」
毎日お嬢さんの分の弁当も作るなんて。
手間の問題じゃなくて、俺の羞恥心の問題。
毎日のように、俺の手抜き弁当が新校舎のお嬢様達にご開帳されてしまうことになるのを危惧しているのだ。
…何処の貧乏シェフが作った弁当だよ、って小馬鹿にされるんだろうな…。
「本当?やったー。明日も悠理君のお弁当だ」
お嬢さん、両手を上げて万歳していた。
そんな喜ぶようなことじゃねぇだろ。
「悠理君、悠理君。明日もタコさんウインナーが良い」
「分かった、分かった」
やるよ。やりますよ。やれば良いんだろ。
…明日からは、もうちょっと早起きして…いつもより手の込んだ弁当にしよう。
更なる手間が増えて、俺はうんざりしなければならないところだったが…。
「朝も、昼も、夜も悠理君のご飯を食べられるなんて。幸せだねぇ。明日もタコさんだと良いなぁ」
「…」
お嬢さんが妙にテンション高くて、やたらと嬉しそうだからか…。
不思議と、愚痴や文句は出てこなかった。
幼児にお弁当のリクエストされた母親って、もしかしてこんな感じなんだろうかと思った。