アンハッピー・ウエディング〜前編〜
ったくこのお嬢さんと来たら、授業中に何やってんだよ。

真面目に授業も聞かず、ノートを取ってる振りをして、間違い探しを作っているとは。

バレなかったから良いようなものの、バレたらどうするつもりだったんだ?

「はい、見て見てー」

自由帳を一枚捲って、また新しい間違い探しを見せてくれた。

さっきはうさぎだったけど、次は…。

「…これ何?」

「海の中の世界」

海の中?これが?

「この…落ち葉みたいなのは何?」

「お魚さんだよ」

「こっちの、エイリアンの子供みたいなのは何だ?」

「人魚姫」

ファンタジーだな。

人魚姫と魚が、海の中で戯れてる…みたいなシチュエーションな訳ね。

一応、お嬢さんなりに海の中の世界を再現してみたらしい。

画力が残念過ぎるから、とてもそんな風には見えないけど。

「えーっと、これも左右で三つ違いがあるから、見つけてみてね」

左右で三つか…。

一つ目は、割とすぐに分かったぞ。

「えーっと…この、泳いでる魚の数が違う。右の方が一匹多い」

「え。そんな違いがあったの?」

おい。製作者。

意図して作ってるんじゃないのかよ。偶然なのか?

「本当だー。じゃあ、間違いは三つじゃなくて四つだ」

「…あんた…適当過ぎるだろ」

「早く早く。あと三つ見つけて」

って言われても、なぁ?

どうせ、また見た目じゃ分からない理不尽な違いしかないんだろ?

さっきのうさぎだって、見た目じゃ全然分からないところが違うって言われたし…。

そうだな、じゃあ…。

「右の海は日本海で、左の海は東シナ海とか?」

「惜しい、悠理君。右は太平洋で、左は大西洋」

…ニアピンってことで良いよな?

ほらな。案の定。

俺も、このお嬢さんのことが分かってきたな。

「あと…このひらひらしてるモノ、何?」

「それは海藻だよ」

「じゃあ、右の海藻はワカメで、左は昆布」

「うーん、惜しいよ悠理君」

惜しいのか。やっぱり?

じゃあ逆だったか。

「海藻じゃなくて、貝に違いがあるんだよ。これ」

「貝…?ひらひらの下に置いてある丸いの、これ貝だったのか」

「うん。右がサザエでね、左がホタテなんだー」

成程。分からん。

両方、ただの丸っこいボールにしか見えないんだけど。

「最後の一個は?」

「右の人魚が女の人で、左の人魚は男の人」

「…人魚は女しかいないんじゃねぇの…?」

案の定、見た目じゃ全然分からない違いしかないし。

な?理不尽だって言ったろ?
< 123 / 505 >

この作品をシェア

pagetop