アンハッピー・ウエディング〜前編〜
深刻な悩みじゃない、とは言ったけどさ。

こうも、何の成果も得られなかったら…何の為に相談したんだ?

こうなったら…質問の仕方を変えてみるか。

「よし、分かった…。じゃあ、同じく…実はうちに、一つ年上の女の子もいるんだけど」

「え、マジ?お姉ちゃん?星見の兄さん、真ん中っ子なの?」

いや、一人っ子だ。

「そのお姉ちゃんって、美人なの?」

その質問、要る?

「え…。まぁ、美人なんじゃないの…?」

この間、新校舎の中庭で見かけただろ?

あの顔だよ。

中身はともかく、見た目は確かに美人だよな。
 
中身はともかく。

「可愛い妹がいる上に、優しいお姉ちゃんまでいるとか、人生の勝ち組かよ…!?」

…何言ってんの?

「その人が、しょっちゅう一緒に遊びに行こうって誘ってくるんだけど…」

「めっちゃ良いじゃん!弟と遊びに行ってくれるお姉ちゃんなんて、滅多にいねぇぜ」

また羨ましがられた。

違うんだよ。姉じゃないんだよ。

じゃあ何なのって言われたら、それはそれで困るんだけど…。

えーっと…同居人?

「星見の兄さんって、見た目によらずシスコンなのな」

誤解だ。

一人っ子だよ、俺は。シスコン言うな。

素直に相談したいだけなのに、俺の評価が段々歪んでいってる気がする。

だからって、本当のことを言う訳にもいかないし…。

「ははーん?星見の兄さん、さてはお姉ちゃんとのデートプランに悩んでるんだな?それで自分らに相談しようって?」

どういう誤解だよ。

俺が本当のことを言えないのを良いことに、段々真実が歪んでいく。

「良いぜ、そういうことなら相談に乗ってやるよ。なぁ乙無の兄さん」

「僕は、人間のオス・メス同士の交友には興味ないんですけど…」

「まぁそう言うなって。可愛い弟じゃないかよ。お姉ちゃんとデートに行ってあげるなんて」

違うっての。

…あぁ、もう良い。勝手に誤解しとけ。

いっそ、本当のことを言ってやろうかと思ったけど。

それはそれで違う誤解が生まれそうだから、やっぱり言えない。
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