アンハッピー・ウエディング〜前編〜
…30分後。

俺はお嬢さん…改め、寿々花さんと共に外出していた。

…ずっとお嬢さんって呼んでたから、いきなり名前で呼ぶと、何だかむずむずするよな。

照れ臭いって言うか…。

…って、良いんだよそんなことは。

それよりも。

「何処に行くんだ?…家の中で遊ぶんじゃなかったのか」

「悠理君と一緒に、ショッピングに行こうと思って」

…とのこと。

…どういう風の吹き回しだ?

「だって、悠理君さっき言ってたでしょ?友達とショッピングとか、映画館とか行ってこいって」

「…言ったな」

「だから、お友達出来たから、こうして一緒にショッピングに行こうと思って」

…成程。

寿々花さんなりに考えてくれたらしい。

自分のやりたいことだけを一方的に押し付けるんじゃなく。

友達のやりたいことも考えて、一緒に楽しめる遊びをする。

その結果、こうして外出した訳か…。

「ショッピング…って、何処で何買うんだ?」

「?どうしよう。悠理君、何か買いたいものある?」

「…ノープランなのかよ」

それじゃショッピングじゃなくて、ただの散歩じゃないか。

買いたいものか…そうだな…。

「…食器用洗剤かな」

色々考えて出てきたのは、それだけだった。

昨日、残り三分の一切ってたんだよ。

って、それ日用品じゃん。

「…洗剤?」

「それから…新しいフライパンかな」

「フライパン…?」

焦げ付きが気になり始めてきたところなんだよ。

「…」

…ごめんな、気の利いた返事が出来なくて。

友達と買いに行くようなものじゃないだろ。

でも、咄嗟に思いつかなかったんだよ。

「それって、何処に売ってるの?この間のお店?」 

きょとん、と首を傾げる寿々花さん。

この間…っていうのは、ファッションセンターいまむらのことか。

あれは洋服の店だから、日用品は売ってない。

「そうだな…。じゃ、バスに乗ってショッピングセンターに行こうか」

「そこに行けば、悠理君の欲しいもの売ってるの?」 

「服でも日用品でも食料品でも、大抵のものなら揃ってるよ」

「おぉ、凄い。魔法のお店だね」

ショッピングセンターなら、ついでに雛堂が言っていた…スイーツの店とかあるかもしれないし。

丁度良いだろ。

「よし、じゃあ行こう」

「行こー」

嬉しそうな寿々花さんを連れて、ショッピングセンターに向かって出発した。
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