アンハッピー・ウエディング〜前編〜
どれが良いと思う、って聞かれても…。

好きなのにすれば?としか言いようがない…。

「こっちは着せ替え人形…。こっちはペットの猫ちゃん…。こっちは何だろう?」

うきうきと、売り場に並べられた玩具を一つずつ吟味していらっしゃる。

恥ずかしくないんだろうか。

…恥ずかしくないんだろうなぁ。

本人が楽しいんなら、もう好きにさせておこう…。

俺は所在なく、玩具売り場を見渡した。

ここは女の子の玩具売り場なのだが…女児向けの玩具って、結構種類あるんだな。

俺が知ってる玩具と言えば、ライダーモノの変身グッズとか、ミニカーとか…そういう男の子向けのものばかりだった。

俺自身は、変身グッズやミニカーは欲しがらなかったのだが…。

一方、今この売り場に並んでいる、女の子向けの玩具。

男の子向けの玩具に負けず劣らず、品揃え豊富である。

さっき、寿々花さんが見てたミカちゃん人形を筆頭に。

お洒落ドレッサーセットに、音が鳴るちっちゃいキーボード。

勿論、女児向けヒーローの変身グッズや、コスプレ衣装なんかもある。

ふーん…。世の女の子は、こういう玩具で遊ぶのか…。

こういう玩具って、何歳くらいまで使うんだろうな?

偏見だけど、最近の子供ってえらくマセてるからな。

玩具で遊ぶより、スマホで動画見たりソシャゲやる方が楽しい、って言いそう。

そういう子供もいるんだろうが、やっぱり子供は子供らしく、玩具で遊んで欲しいよなぁ。

「どれも楽しそうだね、悠理君」

子供は子供らしくとは言ったが、寿々花さんは別だぞ。

あんたは高校生だろうが。

な?見てみろ。幼い頃玩具で遊ぶ機会がなかった、うちの寿々花さんを。

幼い頃の反動で、高校生になって玩具を欲しがってる。

やっぱり、子供の頃は子供らしくないといけないってことだな。

「楽しそうだね、ってあんた…」

これを見て楽しそうと思えるのか?

俺だったら、一回遊んだだけで飽きそうだけど。

「折角だから、こっちからこっちの棚まで全部買ってこー」

おい。やめろ。

人生で一度はやってみたい大人買いを、こんなところでやるな。

子供の玩具を大人買いするって、どういうことだよ。

「こら、馬鹿。一個だけって言っただろ?」

「でも、一個に決められないよ」

「だからって大人買いは無いだろ…」

そうだ、この人中身は子供だけど、金持ちなんだった。

経済観念がどうかしてるぞ。

さっきも、平気でお高いフライパンを俺に勧めてきたしな。

「一番欲しい物を、一つだけ選ぶんだよ」

金に困ってないのは知ってるけど、でもそういうことじゃないだろ。

欲しい物を見つけたら、金に糸目をつけず全部買う…なんてことを繰り返していたら。

この悪い習慣が、これから先もずっと続いてしまうかもしれない。

修正出来るうちにしなくては。
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