アンハッピー・ウエディング〜前編〜
友達とはいえ、召使いに指図されたくない…と、言われてもおかしくないところだったが。

幸い、うちの寿々花さんは素直なので。

「うーん…。じゃあ、頑張って一個だけ選ぶね」

「よし、そうしろ」

玩具の大人買いをやめて、一つだけ欲しい物を選び始めた。

言うことを素直に聞いてくれるのは、寿々花さんの良いところだよな。

良くも悪くも、子供なんだよ。無邪気な子供。

「悠理君、決めた」

「あ?」

「これにするー」

あれこれ考えて、広い売り場の中で寿々花さんが選んだのは。

ピンク色の、おままごとキッチンセットだった。

…結局、おままごとに帰ってくるのか…そうか。

さっき一緒にキッチングッズ見てたから、自分も欲しくなったのか?

「私も、これでお料理作るんだー」

「…あ、そう…」

良いよ、別に。玩具なら。

本物の調理器具使って、魔女の薬を錬成するより遥かにマシ。

玩具で満足してくれるなら、いくらでもどうぞ。

つーか、玩具なのに結構高いのな。

しかも、結構大きい。

幸い我が家は広いし、玩具を置く場所には困るまい。

何より、寿々花さんが自分で欲しいと思ったものを見つけたのだ。

俺が水を差すべきじゃないだろう。

「それじゃ、買ってくるねー」

「はいはい」 

帰ったらまた、この玩具に付き合わされるんだろうなぁ。

気は進まないけど、一緒に遊ぶと約束したんだから、約束は守るよ。
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