アンハッピー・ウエディング〜前編〜
「三人共、何の予定もなしか…。惨めなもんだな…」

思わずそう呟いてしまうと。

「ちょっと待てって。自分は一応予定あるじゃん。レンタル映画観る予定が」

それは予定のうちに入るのか?

要するに、ダラダラ過ごすってことだろ?

「そうですよ。僕にだって予定があります。イングレア様の為に、罪の器を満たすという立派な役目が…」

「お前は暇だよ」

それは予定のうちに入らん。

全く、適当言いやがって。うちの寿々花さんかよ。

「まぁ、でも確かに暇だよな…。くっそー…。折角の休みだってのに、時間を浪費するだけなのはつまらんよな」

「そうだな…」

俺もゴールデンウィーク…何して過ごそう?

新しい家に越してきてからというもの、色々あったもんなぁ…。

週末も家事をしたり、寿々花さんの遊び相手をしたりと、結構忙しく過ごしてきたから…。

ゴールデンウィークくらい、何もせずのんびり過ごしても良いのでは?

一日二日ダラダラしてたって、バチは当たらないだろ。

まぁ、寿々花さんが家にいないことが前提だが。

あるいは…勉強して過ごしても良いかもな。

何だかんだ、毎日授業の予習復習を寿々花さんに邪魔されまくってるし。

それに、ゴールデンウィークが明けたら、いよいよ中間試験が近づいてくるもんな。

ちょっと早めの試験勉強と思えば、まぁ悪くないか…。

…しかし。

「よし、じゃあ折角だから、ここにいる三人でどっか出掛けようぜ」

と、雛堂が提案した。

「どっか…って。何処に?」 

「あ?そうだなー…。まぁ何処でも良いじゃん、行く場所なんて。大事なのは予定を立てることだぜ」

何処に行くのか決めることも、予定を立てることに含まれるのでは?

「何なら、その辺ぶらぶらするだけでも良いじゃん。商店街の食べ歩きとかさー」

成程…。

俺、この辺地元じゃないから…土地勘のある人間の案内があるのは有り難いかも。

寿々花さんも地元のはずなんだが、あの人は出不精だからな。

買い物に行かせても、クレジットカードが使えなかったら、お金の計算もろくに出来ないし。

近所のスーパーが何処にあるのかも分かってなさそう。

「な、良いだろ?」

と、雛堂が促してきた。

…俺個人としては、全然構わないのだが。

どうせ暇だし。

でも…我が家のお嬢様、寿々花さんの身の回りの世話を預かる身としては、どうだかな。

召使いの分際で、勝手に遊び歩いて良いはずもなく。

「…悪いけど、遠慮しておくよ」

「何でっ?星見の兄さん、暇だっつってたじゃん」

そりゃ暇なんだけど…。暇だからって遊んで良い身分じゃないんだよ。
< 153 / 505 >

この作品をシェア

pagetop